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GA JAPAN ー屋根

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「現代建築の屋根」という特集があったので久々に買いましたが表紙の隈さん作品には全く興味はなく。。
8名の建築家へのインタヴューですが、近代以降は屋根なんてリアルなものを載せてしまうのは表現の不自由だという事でこの特に屋根が重要な気候の日本でさえ(それも木造でさえ)フラットルーフが席巻してきたのですから、歯切れ良い話なわけもなく。笑
伊東さん。「ぼくも、ある時期までは『透明でひたすら抽象的な建築が最も美しい』と考えて来たけれど。。結局は『無菌室の中に人間を住まわせる強制』を行なっていたのかもしれません」とびっくりするような反省をしているのですが、ここでも紹介した、震災復興で素直な切妻の家をつくった経緯がこの言葉につながっているのでしょう。

原さん。「屋根はもの凄く難しいんです。アングルによって見え方がみんな違いますから、よほど本格的に検討しないと上手くいかない。ちょっと変化した屋根をつくろうとするとたいていみっともなくなる」と普通は思っていても言わない事をさらりと。「集落が狙っている事は重ね合わせじゃないかと考えています」との話にもつながるけど、さすが原さんだ。

藤森さん。ヨーロッパは日本との気候の違いから木が腐らないから「ヨーロッパの屋ねは日本ほどに厳密に設計する必要が」ないことを理解するまでかなり時間がかかったと。「日本では木が腐るのか?」と聞き返される程だったそうです。また「建築の中で身体性を喚起する要素は斜面の他にない」という文脈で西沢さんの豊島美術館を評価されています。

内藤さん。「屋根に機能を持たせたり構造的な整合性を持たせるなど様々な論拠をベースにして話して来たつもりです。、、その(家型)のイコンに頼ってしまうととても危ない事は分かっている」と難波さんが箱の家のイメージを背負わざるを得ないのと同じ悩みが言葉に出てますねえ。。
屋根ではないけど、スカイハウスのプロポーションが惚れ惚れする程美しく「建築を見るマナーがしっかりしている時代の代表作」と。そのマナーはいずこへ。。

隈さん。「現代建築の屋根だって予め立てられた垂直な要素に横架材をもたれかける事で成立している。つまり屋根は『何かに依存している』という意識がとても大切なんです」「もたれかかる事こそ『負ける建築』に通じます。実は生物も建築も自立できるほど強くない」と。いつもながらに言葉はとても良くわかるんだけど、デザインとして嫌いなだけなのか。(この表紙のも)笑

妹島さん。「屋根自体が表現に見える事を避けようと考えていました。でもフレームを組んで場所が規定されてしまうことを外そうという気持は一貫してあった」あと「流動するだけの空間ではなく、もう少しそれぞれの場所で留まる事も考えて空間をつくりたいと考えています」との最近の変節もあるようですが、空間の密度をつくる要素として、という意味では屋根の話ではないとも言えます。

石上さん。「垂直方向の空間の奥行は人間のスケールを超えている部分でもあり、、、人間が自由にはたどり着けない部分をどのように考えてゆくかは、ぼくにとって建築のあり方を機能を超えたところで考える際にとても重要」「つくったシステムが説明的に現れるよりも、システムそのものは消えて、即物的に空間を体感できるようにしたい。だからコンセプトは建築を組立てる上では必要ですが、体験する上では邪魔なんですね」と、当然ではあるけれど屋根は屋根だけで意味があるはずものなく意味を発するべきでもなく同じ意味で構造も設備も「消え」るべきだというのは同感です。

と最後の「消え」という意味で自分がつくっているものを考えている部分があって、設備は当たり前ですが、構造や仕上や窓という区分が、全て木材でつくられる事で消えたように感じられるから今は出来るだけ木でつくっているように思いますし、屋根は勾配で軒を出すべきだけど屋根が単体として威張ったり意味を発したりしないように内部の天井と連続させて見たり軒先は薄くしてみたりしているつもりでもあります。が、やっぱり木は腐るのですから軒は必要ですよね。
その気持で石上さんのKAIT工房を見直すと、天井を張らず構造を見せてあり、鉄骨が構造でもあり仕上でもあるという即物的なところは良いなと思いました。
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by Moriyasu_Hase | 2012-03-28 14:03 | けんちくーよむ
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